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第7回  右脳と左脳

 右脳と左脳ということばを聞いたことがありますか? 人間の脳は右半分(右脳)と左半分(左脳)に分かれていて,それぞれがちがう働きを持っているというのです。その働きとは,どんなものでしょうか? また,右脳と左脳のちがいをうまく利用した勉強法はないものでしょうか?

★右脳と左脳の働き★

 事故で左脳にけがをすると,言葉が話せなくなることがあることは,昔から知られていました。そして,30年ほど前から脳の研究が進み,右脳と左脳の働きについて,次の表のようなことが分かってきたのです。



 言語の読み取りについて,左脳の方がよく働いていることは,日本語のひらがなやカタカナの読み取りの実験でも確かめられています。ところが,漢字の読み取りについては,とてもおもしろいことが分かっています。
 一字の漢字を読み取るときは,右脳の方がよく働いているというのです。漢字は意味をもった一種の記号(図形)だからでしょう。ところが,漢字を結びつけた熟語や,漢字とかなの混じった文の読み取りになると,今度は左脳の方が働くそうです。
 ひらがなやカタカナの読み取りでは,おもに左脳が働いています。ところが,漢字の混じった文の読み取りになると,右脳も働きだして左脳と右脳がともに働く状態(これを共働状態という)になります。こうなると,読書をする力も高まると考えられます。
 実際,日本人の子どもは外国人の子どもと比べて読書力が高いといわれています。その原因は漢字にあるのではないかと考えている外国の研究者もいるのです。「漢字なんて,めんどくさいだけ!」なんて考えていた人はいませんか? 漢字には,右脳と左脳を共働させるという,すばらしいやくわりがあるのですね。

★右脳と左脳を結びつける★

 「右脳をきたえるために左手を使おう!(右脳は左手に,左脳は右手につながっていることが分かっています。)」なんて,聞いたことがありませんか? 実際には,これはあまり効果がないようです。それよりも大切なのは,右脳と左脳を共働させることです。その例を2つあげてみましょう。

  •  ふつう,数の計算をするときは左脳が働きます。数も言語の一種だからでしょう。ところで,そろばんのじょうずな人は,頭の中でそろばんを思い浮かべて計算することができます。そのような人について調べたところ,右脳が他の人よりも発達していたそうです。イメージをあつかうのは右脳だからです。私たちがふつうに計算するときは左脳をおもに使います。そろばんのじょうずな人は,左脳だけでなく,右脳もいっしょに働かせることによって,コンピュータにもまけない速さで計算ができるのです。
  •  音楽のメロディなどを聞き取るのは右脳です。だからピアニストやバイオリニストのようなプロの演奏家は,特に右脳がすぐれているように思えますね。ところが,プロの演奏家はかえって左脳がすぐれているといいます。音楽を演奏するには,メロディだけでなく,曲のテンポやピッチ,構成などを分析する力がなくてはいけません。これは,左脳の働きですね。プロの演奏家は,右脳だけでなく左脳もいっしょに働かせることによって,すばらしい演奏ができるのです。

 右脳と左脳を共働状態におくことによって,脳の持つ能力が最大限に発揮(はっき)できるのです。それでは,そのためにどんな訓練をすればよいのでしょうか?
 その有力な方法に「過剰(かじょう)学習」があります。例えば英語の単語を10回かかって覚えたのなら,あと5回だけよけいに覚えておくような方法です。はじめは左脳だけが働いていたものを,あと5回の過剰な学習によって右脳の働きまでよびおこそうとするわけです。この結果,英語の単語が言語としてだけでなく,イメージとしてもとらえられるわけです。
 次の図は,水泳の訓練について調べたものです。

 図を見ると練習が進むにつれて記録が次第に短くなっていきますが,一時,上達がとまってしまう時期があります。これを「高原」といいます。「高原」のときにあきらめないでさらに練習を続けると,いっきに上達することも分かりますね。これが,学習(つまり脳の訓練)では,右脳と左脳が共働状態に入った時期にあたると考えられています。だから,「勉強しても成績がのびない!」という人は,脳の「高原」の時期なのです。ここであきらめずにがんばることによって,いっきに学習能力を高めることができるわけです。